『柳生暗殺帖』第16話 -神の余興-(2006年05月号)
竜は竜でも、そっちの竜がからんできたか!
鬼悶島で静観するのかと思いきや、空獄門まで出張してきた無名さん、小次郎と伊達総司が離れ離れになるのを待っていましたね?
なにやら話があるらしい。オンナのケツより大事な。
彼の、
「今ごろは羯磨最強の“四剣王”が、その始末をつけているところか・・・」
という言葉に違和を感じました。
空位だった持国天の座を実力で奪い、羯磨衆に対する影響力を手に入れた―――と推測していたのですが、妙に他人事です。
彼は別格なのかもしれません。
そういえば、無名は羯磨金剛を身につけていないな。
そもそも、あの赤っ面になんの意味があったのか?
うん。
歌舞伎の「隈取」(筋隈)で、特に赤い色は「紅隈」といって荒事の基本である正義、強さ、勇気を演ずる役に使われる化粧だそうです。陽性です。
飛鳥武蔵らしい。
俺の正義は俺が決める―――『聖剣戦争篇』の彼のまま。
そこで、その結果まで一人で背負いきろうとするところが彼の悲劇でありカッコいいところでもあるのですが。
ずっと、「仮面で素顔を隠したい相手」=「無名の存在意義」であると考えてきたので、これについては一件落着。
武蔵が小次郎の前で自ら素顔を発いたのならその意味は明白で、「羯磨衆の無名は、小次郎の前では武蔵である」といったところでしょうか。
小桃を人質にとった形ですが、彼が武蔵ならそうする。
絵里奈という最愛の妹を亡くした彼がなぜ、と思う向きもあるかもしれませんが「妹を想う兄の心」を知ればこそ、です。
それは、小次郎と闘うために。
小桃を護るためなら、小次郎は武蔵を斬る(※01)。
生きていれば絵里奈ちゃんと小桃は同じ年頃、という伏線もありそうだし。
そこまでして小次郎と闘いたい無名(武蔵)の真意はどこにあるのか。
それが明かされるのは、彼の「望み」が明らかになる時ですから、ここはもう素直に「わかりません」と云っておきましょう。
新たな始まりとなりそうです。小次郎と武蔵の。
またしても生殺しです。2ヶ月も。生殺し。
「素顔を見られた相手には、二通りの方法しか残されていないのさ」(※02)
・・・って口走ったりしないかね?
※01:小次郎は小桃を愛しているんだなあ。小桃も小次郎を愛している。闘いの渦中でこういう絆を確認できる二人がうらやましい。それが4年前の「鬼面党事変」に由来するものだとしたら、小次郎は本当にいい「あんちゃん」です。
※02:念のため。『聖闘士星矢』(車田正美/集英社)。
そして、総司もまた「帰るところ」を失った流浪の人だったのだな。
「イタチの最後っ屁」(小次郎)(※03)
により火獄門へ飛ばされた総司は、「拷問用の暗器」を相手にする羽目に。
インドラいわく、「いきつく先」は地獄のほかに極楽もあるそうなので、吹雪の《蛇鋼鞭》は究極のポジティブシンキングの機会かも。
※03:イーさんの余興はもはや「隠し芸」です。ここまで体を張って笑わせてくれるカミサマは意外に「下賤の者ども」が大好きなのでは。
ふやけた感想はさておき、風魔の里がほぼ壊滅したことは、総司にとって他人事ではなかった。
DNAは体から体へ受け継がれる記憶装置のようなもの。「火ノ守」の末裔として総司は課題に直面した、と云えそうです。羯磨衆も「不遇と屈辱」を晴らすために起った一族。闘う動機が怨念である場合、相手と共鳴して感情の暴走に巻き込まれることがあるからです。
『聖剣戦争篇』から引きずっているこの業を、総司はどうやって克服するのか? 個人的に注目しています。
「小次郎なら女を相手に手加減のひとつ(以下略)」
は、よくわかっていらっしゃる、のひと言。
それにしても、小次郎の「神アレルギー」はますます悪化しそうだなあ。
後見人と離れ離れになってしまったぼうやはどこへ?
底の底まで落っこちたのなら、地獄門です。そのまんま。
第15~16話は、易的に「地天泰(寅)」な展開でした。どこを切っても「竜虎」です。
このまま「雷天大壮(卯)」へ突入するのでしょうか。
そんなことより大問題なのは《神威・崩天劇》だ!
取越し苦労ならよいのですが、「カムイ」が出現すると車田漫画は連載が終わる、という云い伝えが・・・ひいぃ。
頼むよ!!!
2006年03月22日